ウクライナ情勢雑感

はじめに 最近クリミア辺りが騒々しい。我々経済学部出身者にとってクリミアは、仲間内で「将軍」と呼ばれていたミリタリーマニアのエンゲルスが『ライン新聞』で当時行われていたクリミア戦争を素材に、その軍事的教養を披露していた土地として懐かしい。大…

二次創作とRPGシステムの変遷

二次創作とRPGシステムの変遷―1 二次創作とRPGシステムの変遷―2 二次創作とRPGシステムの変遷―3 二次創作とRPGシステムの変遷―4 二次創作とRPGシステムの変遷―5 二次創作とRPGシステムの変遷―6

二次創作とRPGシステムの変遷―6

6、まとめにかえて 先日『SW2.0』のリプレイ、『蛮族英雄』を読んだ。この作品は、青年期をアメリカで過ごした日米ハーフのベーテ・有理・黒崎氏の作品で、作中ではマスターをつとめる氏のゲーム性を強調するスタイルを「アメリカ的」と称しており、日…

二次創作とRPGシステムの変遷―5

5、「プラットホーム」の上で二次創作するということ 角川歴彦氏はRPGのシステムを「プラットホーム」とし、実際のプレイであるセッションを「二次創作」としている。RPGの楽しみ方の多くは、というか推奨される楽しみ方はシステムを読んで、その出来…

二次創作とRPGシステムの変遷―4

4、RPGにおける物語の必要性について 物語はRPGになぜ必要なのだろうか。 グダグダなセッションで時間を無駄にしたくないからだろうか。 目的をもってプレイしたという充実感を得るためだろうか。 何をしたのか思い出すという、記憶のためだろうか。 …

二次創作とRPGシステムの変遷―3

3、アプローチの違いに見るRPGシステムの多様化の流れ RPGの「ルール」すなわちシステムに当初記載されていなかったRPGの核心部分をどのように扱うかについての歴史は通常世代論で語られる。しかし筆者はアプローチの相違によって分類されるべき事…

二次創作とRPGシステムの変遷―2

2、RPGにおける「ルール」の位置づけ 例えばRPG『D&D』をやるとして、そのパッケージ化されたコンテンツを何と呼ぶのだろうか。現在では「システム」と呼ばれることが多いと思う思われるが、かつては、そして今でもそうであるかもしれないが、それ…

二次創作とRPGシステムの変遷―1

1、はじめに 五月十四日付の朝日新聞の「be on Saturday」の「フロントランナー」というコーナーに丹治吉順記者による、角川グループ社長角川歴彦氏のインタビューが掲載されていた。 氏はインタビューの中で「テーブルトークロールプレイングゲーム」(以…

野蛮人のネクタイ

今俺は上越線を北上している。新前橋で嫌な女が乗ってきた。宇津木だ。 「先生、こんな朝早く、そんな大きな荷物でどこに行くんですか?」 嫌な目をした女が、嫌な口調で話かけてくる。前者は意識していないだろうが、後者は明らかに意識的なものだ。 「おま…

桜を詠める五首

例年に遅れた桜 当人の知らぬ合間に自粛されてた 常よりも着飾るさくら 人の世に手本をしめす こんなときだから はなぐわし春来りなば咲く桜 去年とは異なる心地で覧る 香でしめす変わらぬことの大切を 満開の桜 知らぬ顔して 花ぞむかしの香ににほいける い…

帝国の生態史観2

第一章 専制帝国とは 第一項 専制帝国の特徴とその基本構造 梅棹忠夫はその論文「文明の生態史観」でユーラシア大陸を東西軸で北東から南西方向へ三分、南北軸で北西から南東方向へ二分し、東西の両端を第一地域、中央を第二地域とした「文明の見取り図」を…

帝国の生態史観1

序章 梅棹忠夫『文明の生態史観』(中公文庫一九七四)について 昨年亡くなられた梅棹忠夫氏は一九五七年に論文「文明の生態史観」を発表された。 これはユーラシア大陸を、東西両端の第一地域と、その中間の第二地域とに分けて、大陸の文明の概観を述べたも…

ipad雑感

遂に日本でも販売が開始され、現在品薄状態が続いているiPadであるが、購入者からは何に使うべきなのか解らないとの声をよく聞く。その度に筆者はTK-80の存在を思い出す。 TK-80は1976年に日本電気(現NEC)より発売されたマイクロプロセッサを搭載した個人…

越後湯沢「山の湯」のこと

今季初めて陋屋のある群馬より三国峠を越えて新潟の温泉へゆく。 群馬は晴天で気温が高かったが、峠を越えると霧雨で気温もかなり低い。雪の可能性さえ感じられた。 本日の目的地は越後湯沢の公衆浴場「山の湯」である。湯については申し分なし。というか私…

夏コミの御礼、および文学フリマ・冬コミの案内

夏コミで「近藤正高とサブカル堂」にいらしてくださった皆さま、どうもありがとうございます。おかげさまを持ちまして、行きよりも帰りのほうが荷物が軽くなりました。お帰りになってから後悔などなされませんでしたでしょうか。 今回は文学フリマと冬コミの…

コミケ参加!

今回もコミケに参加して『サブカル評論』という自称評論誌を出します。 8月16日、東館“M”21b「近藤正高とサブカル堂」です。 今回の17号は特集「時代劇」、小特集「ヱヴァンゲリヲン」、天使の辞典「サブカル政治家篇」、書評、自由論題となっておりま…

七味温泉

過日、長野県七味温泉紅葉館で温泉に浸かる。 みこもかる信濃の天阻踏みこえて 七つのさわや 味ひきの峰や 紅の筆を待ちかね独り寝の 葉の緑ゆく幽谷の初夏 あかねさす朝日と紫陽花あとにして 目指す信濃のももきなす山 久方の空と緑の屋根の下 渓流せせらぐ…

STYLE-FITのこと

先日、時折通っている事務用品店に立ち寄ったら、三菱鉛筆社のSTYLE-FIT(以下「スタイルフィット」と表記)という新製品を見つけた。僕は一目で気に入り、早速家に連れて帰って、いじくり回して遊んだ。以下その雑感である。 ジャンル的な性格把握 スタイル…

赤滝鉱泉

下野の国、赤滝鉱泉にて温泉納めをする もみじばの赤滝の泉 坂くだり求めし宿の湯守が二匹 玉水の滝の麓の赤茶の湯 湯殿の煙匂いも高く 気づかずに秋に色づくもみじばの 赤茶の泉刻の過ぎゆく 湯上りて香りの高きしらまゆみ なお袖を引く飼い猫二匹

チャールズ・パリサー『五輪の薔薇』(1〜5、ハヤカワ文庫2003)読了

先日、チャールズ・パリサー『五輪の薔薇』(1〜5、ハヤカワ文庫2003)を読みました。 秋の夜長、字の本でも読むべェと決意するも、積んでる京極夏彦を読む決心がつかず、長編小説をダラダラ読もうとこの本を手に取ったのですが、それは大きな間違いでした…

文学フリマ参加!!

こんにちわ。 ずいぶんお久しぶりです。 ここ一ヶ月、世界各地ではさまざまなことが起こりましたね。 まさに激動の一ヶ月といったところでしょうか。 例えば、「こんにゃくゼリー」の販売中止とかね。 ところで、宣伝です。 僕が編集をつとめるサブカルサー…

フォークの背に御飯を乗せて食べる習慣について

あなたの身の回りに、ナイフとフォークで食事する際に、フォークの背に御飯を乗せて食べる方が居られないだろうか。 この習慣は長い間、日本の支配的なマナーとされてきたが、近年「アメリカでは……」とか「ヨーロッパでは……」など「〜〜では」を口癖とする「…

コミケ参加!!

えーと、こんにちわ。万里小路です。 実は僕たち明後日、八月十七日のコミケ第三日目に参加します。場所は西館“つ”07b「近藤正高とサブカル堂」で、 「サブカル評論 第15号」を発行します。で、問題なのは、今現在の時点で編集作業中ということなんですよ…

過大な金銭リソースをいかに蕩尽するかについての私的考察、あるいは金銭リソースの扱われ方に見るRPG世代論

はじめに テーブルトークRPGをプレイしていて、金銭がたまる一方で使い道がないという経験をなされた方は多かろうと存ずる。特に高レベルになるにつれて、必要な装備はすでに買い揃えたし、消耗品もたかが知れたものだし、欲しい装備は金銭では購えないも…

ライナスの毛布

世の中には「あるもの」が無くては生きてゆけない人たちがいて、その「あるもの」があるからこそ、どうにか社会生活をおくり、善良な一市民として暮らしている現状がある▼しかし、その「あるもの」は周りの人々からすると無用と感じたり、時には有害ささえ感…

「ポチ」の由来

現在でも犬の名前の代名詞的な存在である「ポチ」がフランス語に由来することをご存知だろうか。 時は幕末にさかのぼる。当時フランスから幕府のフランス式軍隊創設のため、教導団の一員として日本に派遣されていたブリュネ大尉は、一日勝海舟の屋敷を訪れた…

新入社員諸君!

新入社員諸君! 幾分早く生まれた人間としてきみたちに助言したい。飲み会の最初の一杯はビールにしろと。 傲慢と感じるかもしれない。じっさい私は理不尽なことを言っているのだ。だが私はきみたちにその傲慢で理不尽な助言を聞いてもらいたいのだ。 芸事の…

ゲイリー・ガイギャックス逝去

ガイギャックスが死んだ。 私たちの文化的な父であるガイギャックスは、私たちをこの世に残し逝ってしまった。 六十九歳だという。若すぎる死である。 彼が一九七四年に始めたRPGという文化は三八年後の現在、完全に社会に埋め込まれている。 彼の名を知…

オタクの品格

先日二月二二日は猫の日だそうだ。数字の二と猫の鳴き声の「にゃー」をかけたものだという。普段はその愛らしい姿で我々を癒してくれるが、時として空気を読まずにこちらの邪魔をしてくる。流行りの言葉で言えば猫こそKYの最たるものだろう。 最近、自分が…

高学歴のワーキングプア

地方都市の高学歴ワーキングプアの生態、三首。 修士論文通りてのち 喜びよりもまず奨学金止みてのちの暮らしを憂いゆ 癒されたくて 雪を理由にして家庭教師を休む電話をする 今月二九日まであるということは 亜墨利加大統領選挙があるはずですよね などと浮…