高橋欅苑

桜を詠める五首

例年に遅れた桜 当人の知らぬ合間に自粛されてた 常よりも着飾るさくら 人の世に手本をしめす こんなときだから はなぐわし春来りなば咲く桜 去年とは異なる心地で覧る 香でしめす変わらぬことの大切を 満開の桜 知らぬ顔して 花ぞむかしの香ににほいける い…

越後湯沢「山の湯」のこと

今季初めて陋屋のある群馬より三国峠を越えて新潟の温泉へゆく。 群馬は晴天で気温が高かったが、峠を越えると霧雨で気温もかなり低い。雪の可能性さえ感じられた。 本日の目的地は越後湯沢の公衆浴場「山の湯」である。湯については申し分なし。というか私…

七味温泉

過日、長野県七味温泉紅葉館で温泉に浸かる。 みこもかる信濃の天阻踏みこえて 七つのさわや 味ひきの峰や 紅の筆を待ちかね独り寝の 葉の緑ゆく幽谷の初夏 あかねさす朝日と紫陽花あとにして 目指す信濃のももきなす山 久方の空と緑の屋根の下 渓流せせらぐ…

赤滝鉱泉

下野の国、赤滝鉱泉にて温泉納めをする もみじばの赤滝の泉 坂くだり求めし宿の湯守が二匹 玉水の滝の麓の赤茶の湯 湯殿の煙匂いも高く 気づかずに秋に色づくもみじばの 赤茶の泉刻の過ぎゆく 湯上りて香りの高きしらまゆみ なお袖を引く飼い猫二匹

高学歴のワーキングプア

地方都市の高学歴ワーキングプアの生態、三首。 修士論文通りてのち 喜びよりもまず奨学金止みてのちの暮らしを憂いゆ 癒されたくて 雪を理由にして家庭教師を休む電話をする 今月二九日まであるということは 亜墨利加大統領選挙があるはずですよね などと浮…

成人式

観光で神社に行って、本日が成人式だと気付いた際に詠んだもの。二首。 あさはふる風をまつ日のもどかしさ 着飾るはるなの白い襟巻 とりがなくあづまのひとの気ぜわしさ 渡島の年始はけふまでつづく